箱入り娘に、SPを。
「SP外してもらえたの!?うそぉ、おめでとー!」
高校時代からの親友でもある梨花(りか)が、パチパチと大げさに拍手を送ってきた。
それに応えるようにふんぞり返る。
「あの頑固オヤジを言い負かしたの。さすがに私だって自由がほしい!」
「もう二十五だもんね、私たち……。いくらなんでも過保護すぎるとは思ってたよ」
けしからん!と腕組をした父親が怒鳴ってきそうなミニスカート、いかにも歩きづらそうなヒールの高いパンプスをはいて、私たちは金曜の華やぐ街を歩いていた。
ミニスカートなんて、普段は絶対にはかない。
自分で買おうなんて思ったこともなかったが、梨花が「せっかく自由になったんだから!」と先ほど無理やり購入させられたのだ。
「じゃあ彼氏作ってあれやこれやと出かけても、お父さんの目はかいくぐれるってわけだ」
そう言って笑う梨花も、たいそうなミニ丈のワンピースを着ている。明らかに私のよりも丈が短くて、攻めてるなあと思わず見惚れた。
こんなもんなのか、普通の二十五歳って?
私はきっと、普通の二十五歳じゃない。
だから『普通』がよく分からなかったりもする。
なるべく普通でありたくて、普通に髪を伸ばし、適度に髪を染め、普通にメイクして、普通におしゃれをたしなむ。
それが私の最大の努力だ。