箱入り娘に、SPを。
注意力散漫
『結婚式の招待状が届いているから、取りに来てね』

という、母からのメッセージを受け取って数日後、私は久しぶりの実家へと出向いていた。

「そっか、千夏も結婚するのかあ」

千夏から届いた招待状を開封しながらつぶやくと、そうねえ、という母の声。おそらくコーヒーを入れているのであろう、いい香りがリビングまでする。

家族は全員知っている千夏。
私が昔から仲の良かった幼なじみで、実家どうしが近い。
家は近くとも学区が違っていたので、学校は別々だったのだがいつからか仲良くなり、親の職業云々を気にせず遊べる友達だった。


「あ、コーヒーごちそうさまです。ありがとうございます」

母が運んできたコーヒーを出され、私の隣でとても自然に受け取る小太郎さんの言葉で、一気に現実に引き戻された。

「小太郎さん?なんか普通にうちに来ちゃってますけど、ここ、私の実家ですよ?」

「えっすみません」

「こら美羽」

すぐに母の厳しい一言。

「お母さんがお招きしたのよ。あなたに彼を出入り禁止にする権利はないの」


─────本当に、私のプライベートとは?


不満たっぷりな顔で、隣に座る彼を見やる。
いそいそと砂糖とミルクを入れている姿は、やはり甘党である。

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