箱入り娘に、SPを。
「趣味ねぇ。私はこうやってお客様とお話するのが大好きよ」

カウンターに頬杖をついて、にこにこと私がガパオライスを食べているのを眺めながら由花子さんが笑うのだった。

「美羽ちゃんには趣味はないの?」

「うーん、特にこれといったものがなくて。一応、週に二回はジム通いしてるんですけど、友達とピラティスやってて」

「えー!すごいじゃない。立派な趣味なんじゃ?」

とは言われたものの、彼女が言うほど好きだから通っているというわけでもない。
少しは体を動かしてみた方がいいのではという思いつきから始めたものなので、私が言い出したのか、梨花から言い出したのか、それさえも曖昧な始まりだった気がする。

中番の仕事を終えてからこのお店に来ると、ちょうどよくピーク帯が過ぎていて由花子さんともゆっくり話せる。

早番では混んでいるし、遅番だとこのお店も閉店時間になってしまう。
このちょうどいいゆるい時間が、ゆったりしていて幸せだ。


「─────彼は相変わらず甘党ね」

由花子さんがちらりと私の後ろに視線を送る。

いつもの、私が座るカウンターではない窓際の二人がけのテーブル席に座る小太郎さんは、オムライスをさっさと食べ終えて、季節のフルーツパンケーキをダブルで頼んでおり、そちらがメインか?というほど写真を撮っていた。

パンケーキにはたっぷりの生クリームと、この時期に美味しい旬なフルーツがふんだんに散りばめられている。


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