黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛


 その後は、レイリの家にお邪魔することになった。いや、家ではなく豪邸と呼んだ方がいいのかもしれない。けれども、他の白蓮達の家はお城のようなものだったので、レイリの家はそれに比べれば質素なものと言えた。
 白を貴重とした作りで、少し古いところもあるが、それがアンティークのようでとても綺麗だった。


 「僕はあまり家に興味がなくて、使わなくなった家を貰ったんだ。まだ十分住めるからね。……では、どうぞ。」


 レイリは白蓮の刻印を持つ者達に慕われているのがよくわかった。
 高い壁の中に入ると、人は少なかったけれど、レイリを見つけるとすぐに皆が集まって「レイリ様おかえりなさい。」「今日も怪我などはしていませんか?、レイリ様。」と、声を掛けてくるのだ。
 特に女性は目をキラキラとさせて、恋する乙女の瞳で彼を見ていた。
 白蓮の中でも、白騎士隊長ということもあり、皆に慕われているのかもしれない。


 そんなレイリは、自分の玄関のドアを開けて家に招いてくれた。

 エントランスはとても広く、洋画の映画に出てくるお城のようなだった。絵画や綺麗な壺、お花も綺麗に飾られており、美術館のようだった。

 
 「おかえりなさいませ、レイリ様。」
 「あぁ、マナ。今日から客人が来てくれたから、お部屋を準備してくれないか?」
 
 そう言ったのは、黒のロングスカートに、白のYシャツ、首には可愛いレースのリボンをつけている、水音より年上の女性だった。その女性は、黒い髪をバッサリ切っており、首には青草と思われる緑の刻印が見えた。
 緑の刻印は、様々の草が描かれており、太陽な形になっていた。

 
 「………レイリ様が女性を連れてきた!!え、どうしたのですか?婚約者ですか?恋人候補ですか?それとも、遊びの女の人ですか?」


 マナも呼ばれた女性は、水音の事を見て、ワタワタと焦り始める。大きな声だったためか、他の使用人らしき人がエントランスに集まってきてしまった。

 それを見ていたレイリは、苦笑しながら「マナは、おっちょこちょいなところがあるんだよ。」と、水音に耳打ちしてくれた。


 「マナ!」
 「っっ、はい!」
 「少し落ち着いてくれ。この方は、そのような方ではないよ。まだ……ね?」
 「え………?!」
 

 レイリの言葉を聞いて、水音は顔を赤らめてしまう。まだ、というのは、自分はどうなる予定なのだろうか……。
 

 「マナはこの家のメイド長をやってもらっているから、いろいろ聞いてくれ。マナと同じ服を着ている女性は皆、使用人だよ。この家には10人ぐらいしか、使用人はいないんだ。申し訳ないね。」
 「いえ、そんな!ありがとうございます。」


 おうちにメイドさんが10人もいれば十分のような気もするが、この豪邸だと足りないのだろう。そして、他の白蓮の家の者は、もっとたくさんの使用人がいるに違いなかった。


 「マナ。この方は、無色の刻印だ。丁重に扱いなさい。もちろん、手を出したり、何かをしたらどうなるかわかるね。もちろん、他のみんなもだ。」
 「「かしこまりました。」」


 無色と聞いて、ざわめいたメイド達だったが、レイリの話の後は、しっかりと挨拶をした。

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