虚愛コレクション


それはうっかりしていた。と言うような声で。でも、うっかりで忘れるような事ではない気がする。


「学校なのに忘れてたんですか?」

「ん、忘れてた」


簡単に忘れるものなのかよく分からないが、大学生なんて私には未知の世界なので何とも言え ない。

思い出した割に彼は暢気で、冷凍庫を探っては買い置きしているらしいアイスを物色していた。

やがて、決めたのかバニラアイスを手に取り、今度は此方に投げ掛けてきた。


「何味がいい?」

「チョコがいいです。って言うか行かなくていいんですか?」

「これ食べてからでも間に合うし」


言いながら私にチョコアイスとスプーンを差し出してきてくれたので素直にお礼を言って受けとる。

蓋を開け、一口口に含むと甘い。でも美味しい。冷たい。

チラリと彼を見ると同じように食べているのだが無表情。そんな彼は不意に此方を見て言った。


「ね、アイツとまだ会ってるの」

「……アイツ?」


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