虚愛コレクション


夏休みに入った。


だからと言って何だと言うことはない。彼ともあれ以来普通に会っている。

ただ、距離が開いた気がする。もともと開いてたものだが、でも確かに開いていた。

それに気付かない振りをして、互いにあの日の話題に触れないようにして今日も近くにいた。


「あつ……」


そんな事を漏らしながら彼はソファーで寝転がっている。


「そんなに暑いですか?」

「……暑いよ。アンタどっかおかしいんじゃないの」


とエアコンのリモコンを手に取り、電源をオンにする。
ゴーッと音を立て、冷気が送られてくる。

彼は小さなため息を漏らし、モゾモゾと動き始める。

まだ全然効いていないが、どうやら付けた事で行動する気にはなれたらしい。

と言っても冷蔵庫の前に移動するだけなのだが。


「最初からつけとけばいいじゃないですか」

「電気代勿体無い」


うちは常につけっぱなしなので、勿体無いと言う概念が薄いため、イマイチピンとは来ない。

普通はそんなものかと思っていると彼は冷凍庫を覗き込んでいた顔を上げて呟いた。


「あ、今日は昼から学校だった」


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