虚愛コレクション
「……あは。だって、神楽くん可愛い系じゃない?って言うと怒られるかもだけど」
「可愛い系、ねぇ……?」
「あ、怒った?」
「別にぃ」
唇を少し尖らせて、恨めしげな目を向けてくる。不満なのだろうそれにまた笑ってしまう。
「ほら、仕草とかも可愛い」
と言えば目に分かるくらいムッとした。
「月並みな事言うけど、僕だって男なんですけどー」
知ってるよ。とは反抗的になってしまうから口には出さなかった。
そして、男だって感じたくないから。感じるのはただ一人でいい。ただ一人がいい。ただ、一人。
「透佳さん……」
「え?」
「え?あっ!いや、あのっ……」
呟いてしまった一言は、喧騒に掻き消される事なく、目の前の神楽くんの元に届いてしまったようだった。
頭をフル回転させ、取り繕う言葉を考えた。
「あ、の……っ!あ、そう!神楽くんは何で透佳さんが大学生だって分かったのかなー、なんて」
確かにこれは前々から気になっていたのだが、今じゃなくとも良かった筈。
だが、これ以外は出なかった。