虚愛コレクション

チラリと相手の顔を伺えば、一瞬停止しながらも直ぐにニコリと此方に笑い掛けてきた。

良かった。怪しまれたかもしれないが、あからさまには表情に出されなかっただけ救いだ。


「それなら簡単だよ。透佳さんのポケットから、あの近くにある大学の学生用の入校許可書が見えてたんだよ」

「あ、それ。あの近くに大学なんてあった?」

「あるよ。あっちは別のキャンパスだけど。 ちゃんとした方の大学は彼処と真逆にあるし」


真逆の方にあるのは何となく知っていた。場所なんて知らないから見たことなどなかったのだが。

と言うことは彼の通っている大学はそこらしい。


「んで、後は見た目判断。あの見た目であの時間に私服となると……って。細かいことははしょるけど」


と、言われ呆気に取られる。なかなかに、考えていてよく見ていた。 だから、急に怖くなった。全部見透かしてるんじゃないかと。透佳さんの事も千代の事も。

その微笑んでる瞳の奥に映っているのは……


「……」


いいや。大丈夫だ。きっと。そう、きっと。

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