虚愛コレクション
――
「ありがとうございました」
ペコリと頭を下げてお礼を述べる。
「で、何してんの」
彼はお礼を言われようが言われまいが関係ないらしく、寒そうにマフラーを口元に上げながら私の事を聞いてくる。
少々言いにくいが、大人しく答えようと口を開いた。
「……ママに今日テストで早く帰る事、また伝え忘れちゃって。それで、時間潰そうと公園に居たらあの人に引っ掛かっちゃったんです」
「引っ掛かったまま、何処か行くと思ったけど行かなかったね」
と言われてハッとする。そうだ、感謝と同時に責めたい気持ちもあるのだ。
「透佳さん私を一体何だと思っているんですか?あと、何で黙って見てたんですか?」
若干詰め寄るようにすれば、彼は私に近寄られたく無いかのように避け、そして歩き出した。
私も人混みを避けながら早足に彼の隣に並んだ。
「俺がアンタを助ける意味無いし、それに俺もあのオジサンと変わらない訳だし」
そんな筈などない。意味ないなんて、変わらないなんて、言ったところで私は否定する。
すがるように彼の服の裾を掴んだ。
「意味ないなら、さっき私が走ってたのを無視すればいいじゃないですか。さっきのオジサンと透佳さんじゃ全然違いますし」
「……」
と、彼は急に立ち止まり、手は払われた。