雨宿り〜大きな傘を君に〜
佐渡先生に見つかると面倒なことになるだろうから、きっと菱川先生は追ってこない。
そう思ったのに。
「ハナちゃん!」
菱川先生は私を追い越して、道を塞いだ。
「俺に言いたいことがあるなら、きちんと聞くから」
「先生…なんで…」
佐渡先生がまだ近くにいるかもしれないのに。
「寒いでしょ、カフェでも入ろう」
菱川先生は平然と近くのカフェを指差した。
「誰かに見られたら…」
「他人の目を気にすることより今は、ハナちゃんがなにを考えているかが気になるよ。おいで」
先程の大胆な行為を咎められるわけでもなく、変わらない優しい声で先生は、お店の扉を開けてくれた。
いつまでも扉を開けてもらうわけにもいかず、カフェの中に入った。