雨宿り〜大きな傘を君に〜
「用がないなら、あっちで適当にしててくれ。気が散る」
菱川先生があっちと指した場所は、準備室の窓際に置かれた長机だった。近くにパイプ椅子もある。
「使ってもいいんですか?」
「ああ」
「ありがとうございます!」
先生の横顔を見ながらお礼を言う。
今までで1番、先生の近くにいる気がする。
昨夜は暗くてよく見えなかったし。
肌キレイだな…。
ヒゲは薄い方かもしれない。
無造作ヘアは相変わらずだけれど、その黒髪は触れたらサラサラしているんだろうな。
睫毛も長いし、新たな発見。
「そ、それでは使わせて頂きます!」
思わず魅入ってしまい、慌てて菱川先生から離れる。
柔軟剤の優しい香りがした。