雨宿り〜大きな傘を君に〜

さすがに準備室までは崎島も追ってこれなかったらしく、窓からの光を浴びながら自習に取り組む。


菱川先生がキーボードを叩く音と空調の音が微かに響く室内はなぜかひどく安心した。


誰かの気配が近くにあるって、いいな。


皺のあるワイシャツを着た菱川先生の後姿を見て思う。


ひとりはやっぱり寂しいと…。








「おい、」


揺れてる?


「起きろ!」


「…はい!」


大声にハッと、した。


重い瞼と、机に伏した顔。



あー、やっちゃった。
準備室で居眠りなんて…。



「ごめんなさい…」


どうやら菱川先生はガタガタと長机を揺らして私を起こしてくれたようだ。

気まずさのあまり菱川先生を直視できなかった。

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