雨宿り〜大きな傘を君に〜

佐渡先生はピンク色が似合う、小柄で可愛らしい女性だ。年齢も菱川先生とそう変わらないだろう。

崎島曰く、隠れ巨乳のようで、男子生徒からの人気は高い。


菱川先生と同じ数学担当だから、本当に相談したいことがあったのかもしれない。
それでも相談相手ならもっと話しやすそうな先生を選べばいいものを…何故、菱川先生なのだろう。


なっ…。


もう少しで駅というところで、佐渡先生は菱川先生の腕を引いた。反射的に立ち止まった菱川先生はすぐにその手を払いのけ、なにかを言った。


それに対して佐渡先生も口を開く。


数言、言葉を交わした2人は再び歩き出し、駅の改札で別れた。


我慢ならなくて、私は改札まで走る。


「その頰、どうしたの?」


先生は改札の中に入らずに、その場で待っていてくれた。


「佐渡先生はなんて?」


頰の痛みは消え去り、先生に詰め寄る。


「なんでもないよ」


けれど軽く受け流されてしまった。

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