雨宿り〜大きな傘を君に〜
勢いよくーー
「痛ッ、」
渾身の力を振り絞って、彼の急所を蹴り上げた。
女子だからとか、スカートだからとか、恥じらいを全て捨てて蹴ってやった。
油断していた崎島は飛び跳ねて、地面に尻餅をついた。
「ごめんなさい」
顔を見ず、謝罪の言葉だけを残して駅への道を駆け戻る。
アパートに戻ることが1番安全だけれど、部屋の場所を特定されたくなくて、人通りの多い道へ逃げた。
傘をさす人々に紛れて、大通りを走り続けた。