雨宿り〜大きな傘を君に〜

崎島の金髪が、私の顔に触れる。
それだけ私たちの距離は近い。


「俺、中学の時のダチに聞いたんだけど。大野ん家って、お母さん病気で、父親はいないんだって?俺、力になるよ」


「……」


崎島、もうその情報は古すぎるよ。

父も母も、いないのだから。



「ありがとう。でも私は大丈夫だから」


「なんか俺にできることない?」


遠慮がちな文句なのに、バッグを掴む力は強く、どちらが彼の本心なのか分からない。


「なんでもするよ」


そう言って、彼は私の頰に触れた。


体温の高い手で、右頬を包まれ、

吐き気を覚える。



本当に崎島が私のことを思ってくれていたとしても、生理的に無理だ。


身体中が崎島を拒絶している。

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