雨宿り〜大きな傘を君に〜
バレンタインデーは忘れないようにしないと。
今までは気にも留めないイベントだったからね。
「素敵な時計をありがとうございます」
「気に入ると嬉しいよ」
「お返しに私もなにかプレゼントしたいです」
コンビニでお金を下ろして、先生が欲しいものを贈れたらな。
私の提案に先生は頷いてくれた。
「ちょうど今朝、読み終わっちゃったから、なにか本を買いたいな。面白そうなのをハナちゃん選んでよ」
「本ですか」
「俺、どんなジャンルでもいけるから大丈夫だよ」
本で良いのだろうか。
それでも女子高生への彼の気遣いに甘えておくことにした。
「分かりました!本屋ですね!」
コートのポケットに手を入れて歩く先生を追い越して、本屋に走る。
感動するような、心に残るような本を選ぼう。高価なものを贈るよりもずっと先生が喜ぶ気がするから。