雨宿り〜大きな傘を君に〜
「俺と、大野は境遇が似てるんだ」
崎島の答えは意外だった。
「俺の両親は他界していて、俺は養子に出された。要するに俺はひとりだし、孤独なんだ」
淡々と語られた言葉は、常にハイテンションな彼から発せられたものとは思えない。
「だから大野が時折、見せる寂しそうな表情に惹かれた。父親がいなくて母親も病気で、それでも気丈に振る舞うおまえが見せた儚げな顔が忘れられないんだ」
「私、そんな顔してる?」
「たまにな。俺ならおまえの気持ち分かってやれると思うぞ」
そうだね。
崎島の言うように私たちは似ているのかもね。
今まではそんなこと思いもしなかったけど。
「だからこうしてまたゆっくり話がしたい。ダメかな?」
「いいよ」
迷わず即答した。
塾の友達とお茶をして愚痴を言い合う。
今までに経験してこなかったことだけど、私に話すことで崎島の気持ちが軽くなるならそれもいいも思った。
今まで崎島のことをよく知らずに、一方的に距離を置いていたけれど。彼は彼なりの苦労があって、それでも塾では笑い、他者に気付かれないよう気丈に振る舞っていたんだ。
崎島の本心を知ろうともせず、完璧な人と思い込んでいたことは彼に失礼だったな。
「本当にいいのか?」
「うん。私のこと気に掛けてくれてたのに、避けてるような態度とってごめんね。ほら私、友達とかいないから。よく分からなくて」
「そっか…めっちゃ安心した」
いつもの彼の満面の笑顔が見れたことに、こちらも安心した。