俺の「好き」は、キミ限定。
「はい、これ。今日の"レッスン"」
渡されたのは、あの恋愛指南書だ。
ミオの愛読書でもある、俺達を繋いでくれた、一冊の本。
「なんだかんだ、今のアンタたちにピッタリなんじゃない?」
開かれたページには、レッスン内容が書いてあった。
──【さぁ、一歩前に踏み出そう】
続く例文には【いざ勝負!運命をかけた水泳大会後に、告白!? 勇気を出して、一歩前に踏み出そう☆】なんて言葉が書かれていて、胸の鼓動がドクリと大きく高鳴った。
「今日、美織は病み上がりなのに委員会の仕事を押し付けられて、まだ学校に残ってるよ」
「え……」
「そういうとこ、バカ真面目だからね。でもまぁ、そのおかげで今から学校行けば、まだ美織に会えるかもね?」
そのたっちゃんの言葉を聞いて、グッと拳を握り締めた俺は、真っすぐに顔を上げた。
「アンタ、美織のこと好きなんでしょ。だったらまさか、このまま終わるなんてことしないよね?」
「──するわけないだろ」
反射で出た答えは、次にするべき行動を示していた。
「このままでなんて終わらせない。ミオのことだけは、絶対に諦めない。だって俺は──ミオのことが、好きだから。俺にはミオ以外、考えられない」
言葉と同時に走り出していた。
強く地を蹴って、前へ前へと足を運ぶ。
──ゴチャゴチャと頭でばかり考えるのはもうやめよう。
会って目を見て、きちんと彼女と話をしよう。
俺が……ミオを好きだってこと。
ミオを傷つけた、俺の友達のナルのこと。
全部全部、思っていることすべてをミオに伝えるんだ。
そう考えたら気持ちが急いて、とにかく今は一秒でも早くミオに会いたくてたまらなくなった。