俺の「好き」は、キミ限定。
 


「大丈夫だって! 飛び降りれば、普通に降りられるから!」


下にいる男の子が木の上にまたがっている男の子に声をかけているけれど、木の上の男の子は幹にしっかりと抱きついて動かない。


「む、無理だよ……っ。降りられるわけないっ‼」


さっきの悲鳴の正体は、あの男の子らしい。

多分、三人で木登りをしていて、あの子だけ降りられなくなったんだ。

バカだな。降りられなくなるくらいなら、見栄なんか張らずに、木に登らなきゃいいのに──。


「ど、どうしよう、ユウリくん……っ。誰か、大人を呼んでこなきゃ──」

「大丈夫。俺が行くよ」

「え……」

「ちょっと待ってて」


そう言ってベンチから立ち上がると、駆け足で彼らのもとまで向かった。

結局、つられて立ち上がったミオもついてきて、俺が足を止めた数歩後ろで立ち止まる。

 
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