終わりにした夫婦

···正基④


あれから何時間
   座っていたの・・・か・・・

・・・お・・・と・・・?

あっ、電話か・・・

  ・・・亜子か・・・・


「あこ・・か?」
「今頃、妻の大切さでも
      わかったの?」
「・・・・・おふく・・ろ・・?」
「あんな、良い嫁を
あなたのお陰で
手放さなくては、いけないなんて
情けない
今、あなたに出来ることは
一日も早く、離婚届を書いて
亜子さんを自由にしてあげることだけよ。
わかった?」
「お袋?俺はそんなにダメな夫?父親か?」
「ダメ?はぁ‥‥まったく
我が子ながら‥‥情けない。
あなた、結婚するとき
何て言っていたか、忘れたの?」
「・・・・・・・」
「そうよね、忘れてるわよね。
凄くモテていた亜子さんを
妻にすることができて
本当に幸せなんだ。
だから、俺が幸せな分
亜子を大切にして
俺を選んで良かったと
思ってもらえるような人生を
送れるようにするよ。
って・・・
あれは、結婚して
たった数年の夢物語しかなかったのね。」
「・・そん・・・な・・・」
「生きてるんだから
そうそう、出来ない?」
「亜子が、そうお袋に言ったのか?」
「あなたは、やはり亜子さんのこと
何もわかってないわ。
亜子さんは、あなたと離婚して
正解だわ。
亜子さんは、何も言わない。
離婚の事も、自分に我慢が足りなくて
すみません、と言ったの。
だけど、わかるじゃない。
家にくるのも亜子さんと子供達だけ。
正基は、何をしているの?
と、訊ねても正基さんは仕事が
忙しくて、すみませんって、毎回言って。
何年も何年も・・・
亜子さんは、一年に二回は
必ず遊びに来てくれた上に
私やお父さんが、体調を崩すと
すぐに来てくれて・・・ね。
あんな良い嫁・・いないわよ」
と、母は涙声で語ってくれた。

その後、何を話したのか
あまり、覚えていないが・・・
受話器を持ったまま
耳元で
ぷーっ、プーッ、と鳴っていた。

お袋から言われた言葉が・・・
そうだ・・・そうだった・・・
亜子と結婚出来る嬉しさで
亜子を幸せにするんだと・・・
・・・・俺は・・・・
・・何をやっているんだ

今からでもいいから謝って・・
もう一度・・やり直し・・たい・・と・・
やり直したいと、伝えよう!
そうだ!! そうしよう。と考えた。

だが・・・それが出来るなら
亜子は、話し合いをしたのではないだろうか?
何ヵ月も前から
一人で考えて計画をたてたり
しないんじゃないか?
ああでもない・・・・
こうでもない・・・・・
と、考えていると

外は、明るくなり
それでも、俺は、決心が出来なくて

結局・・・・・

19時を回って
弁護士に連絡をした。

弁護士は、
「明日の朝、離婚届を
受け取りに伺います。」
と、言った。
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