終わりにした夫婦

···無かったことに


羽叶さんより
明日事務所にて確認してから
連絡します。と返信があった。

一気に他人になったような感覚に
寂しさがあったが
仕向けたのは自分だから
と、思いながら涙が溢れた。

若く今からの幸せを考える
人達とは、違うのはわかっているが
心から愛するようになっていた人だった


翌日、出社すると社長から
心配そうな顔をされたが
私からは、なにも話さなかった。

葵さんには、
『改めて話を聞いて下さい。』
と、昨夜ラインした。

葵さんからは、
『わかった。なんでも、話してね。』
と、言ってもらえて
嬉しかった。

今日1日、仕事に集中して
ミスなどしないように
丁寧に仕事や接客をした。

集中していたからか
お客様と接していたからか
1日ミスをすることもなく
穏やかに過ぎた。

お昼休みに、羽叶さんから
『19時には仕事が終わります。』
と、ラインが来ていたので
『連絡ありがとうございます。
カフェテリアでお待ちしています。』
と、返した。

GOEMONの手伝いに入り
片付けを終えたら18時半に
なっていて、メイクのやり直しをして
急いで待ち合わせの場所に
向かうと
羽叶さんは先にきて
わかりやすいところに座っていた。
「すみません。遅れまして。」
「いや、時間通りだから」
と、言いながら羽叶さんの前に腰かけた。

コーヒーの注文をして
届くまでお互いに無言だった。

二人のコーヒーが届き一口を口にして
姿勢を正して羽叶さんの顔を見て
一言、一言を口にした。

「なにをどう話して良いのか
わからないと言うのが今の私の
正直な気持ちなのですが

私は、夫だった正基さんに
必要とされていない
人生をずっと歩いてきました。

ですから、子供達の巣立ちと共に
自分の為に生きていこうと
思いました。
そして羽叶さんに出会い
羽叶さんが一人の女性として
私と接してくれたことが
凄く嬉しかった。

それから、大事に大切にしてもらえて
温かい気持ちにもなりました。

青山さんご夫婦から伺った事が
羽叶さんと瑛里子さん?の
全てではないことは理解していますが
正基さんの時は、子供達が私の
生き甲斐、支えとなりました。

ですが、今回は自分しかいなくて。

自分以外の事を優先される····
され続ける·····事がわかっていて
一緒に生きて行くほど
私には、強さも理解力もありません。

それは·····私の気持ちが
羽叶さんにあったとしてもです。

ですから、申し訳ありませんが
お付き合いも、その先のお話も
なかったことにしたいと思います。

羽叶さんには、
沢山助けて頂きました
本当にありがとうございました。」
と、言って頭を下げた。

顔を上げて見えた羽叶さんの顔には
悲しみや苦しみが見えた。

彼は・・
「省吾の話した事は、
細かいことを抜きにして
全て本当の事です。
ただ、瑛里子に特別な感情は
まったくありません。
僕にとって亜子は、亜子さんへの
気持ちはなんら揺るぎないものです。
ですが、亜子さんを
傷つけてしまった事には
変わりありません。

申し訳ありませんでした。

省吾に言われるまで
亜子さんを傷つける行為をしたことに
気づいていない愚かものです。

瑛里子とは、腐れえんであり
旧友の感覚でしかなく
困っている友人を助ける?
一時帰国している友人と会う?
そんな·····感覚しかなかった·····

ですが、それは僕の勝手な考えです。

愚かな僕ですが
亜子さんへの気持ちは、
嘘偽りはありません。
だから、あきらめない。
もう一度、振り向いて貰えるように
がんばります。」
と、言ってくれたが。

私は、首を横にふり
「私の為に変える必要はありません。
羽叶さんが瑛里子さんを大切に思って
いる事は、わかりますので
その気持ちは、大切にして下さい。
羽叶さんは、
これから先も
瑛里子さんが困ったり
お願い事されたりしたら
無視できないと思います。

長年そうやってきた事を
人に言われたからと変える事は、
できないと思います。

二人の中では、愛情を通り越した
絆があるのではないでしょうか
それを大切にして下さい。」
と、話すと
羽叶さんは、何度も首をふっていたが
私は、席を立ち
「お父様、お母様に
宜しくお伝え下さい。」
と、言い頭を下げて
コーヒーの代金をテーブルに
そっと置いて、カフェをでた。

自分の両親や子供達には
今は話す気持ちにならず
葵さんには、
『羽叶さんとは、お別れしました。

会社を辞めたくありません。
ですが、会社の勤務も
マンションにも
このまま居ても良いのでしょうか?』
と、ラインすると
直ぐに電話があり
「羽叶さんの事は抜きにして
会社もGOEMONも
辞めないでね。
マンションも変わる必要ないから。
心配しなくて大丈夫だから。

私も省吾も亜子ちゃんが
大好きで亜子ちゃんと
ずっと一緒に仕事したいと
思っているんだから。」
と、言って貰えて本当に嬉しくて
「···葵さんっ···
  ···ありが····とう·····ございます······」
と、お礼を言って電話を切った。
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