心の中に奏でる、永遠の向日葵


すごい、俺、全然気づかなかったのに。やっぱり、伊藤は黒西の事を見ている、という証拠だろう。
 

伊藤の気持ちは本気だ。何気ない発言から、強くそう思わせる。
 

そうなると、やっぱり気にかかるのは、黒西の気持ちだ。

実質、伊藤と会話しているときの黒西は幸せそうだし、もしかしたら本当に、その『一目惚れした人』とやらは、伊藤の事かもしれない。
 
そう思いふけっていたら、異常な静けさが、会場を包み込んだ。
 

はっと前を向くと、二か所に試合場所が設置されており、どちらの人たちも、緊張な静けさが立ち込めている。

そう、ピアノのコンクールで、曲を弾く直前の、あの異常な静けさと同じ。
 

左の方を見ると、胴着に『水田英雄』と書かれた人を発見した。あれが、水田だろう。
 

水田と対戦相手は、まず一礼をすると、何歩か歩み寄り竹刀を構え、腰をかがめる。
 

「はじめ!」
 

審判の鋭い音と共に、両者立ち上がった。
 

とりあえず、試合は始まったらしい。

しかし、二人とも、まったく戦おうとしない。

ひたすらグルグル回っては、相手の出方を伺っているのか、竹刀を動かさないのだ。
 

「ああ、むず痒くなってきたー。なんで二人とも戦わないんだよ」
 
「なんかあるに決まってるじゃない。あんたは黙って見てればいいの」
 

二人の会話が聞こえてくる。俺は、固唾をのんで、水田の姿を見続ける。
 
「キャア!」



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