心の中に奏でる、永遠の向日葵




二人の姿が見えなくなったと同時に、向日葵ももとの服に着替え、更衣室から出てくる。
 

「お待たせ」
 

向日葵の言葉にかぶさるように、アナウンスが聞こえてきた。
 

「これより、毎年恒例のフィナーレ。花火大会を開催いたします」
 

そのアナウンスを合図に、皆の声も一層大きくなる。
 

楽しみだな。そう言いかけたところで、向日葵の顔が、暗くなってることに気づく。
 



…そうだ。向日葵は目が見えないから、花火も見れないんだ。
 

でも、自分一人だけ花火が見れず、周りの歓声を聞くのは、どんなに辛いものなのだろうか。
 

「…向日葵。よかったら、音楽室に行かないか?」
 
「え?なんで?」
 

まさかの質問返しに、俺は慌てて言葉を見つける。
 

「あ、いや、その…。ほら、俺もあんまり、人混み好きじゃないしさ」
 

苦しい言い訳だ。それでも、向日葵はにっこりと笑って、「うん」と応じてくれた。
 

俺の意図には気付いているのか、純粋に俺に従ってるだけなのか。
 

分からないが、とりあえず二人で、音楽室へと向かった。
 



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