どこかで出会っていた人 〜 謎めいた同僚

「うん、まあ、僕は地元なものでねえ。休みとなると大抵スキーかな。でも、だんだん忙しくなってここ数年は行ってなかったよ…」


　
須田の話を聞きながら、女子社員の顔にイライラした表情が出て来た。

亜矢もハッとした。いつの間にか自分も、須田でなく早坂が何かを話してくれるのを待っていたのだ。

しかし既婚の須田は、久々に女子社員に注目されていると思っているのか、熱心に自分のことばかり喋っている。



「じゃあ、お二人ともスキーはお上手なんですね」

じれったい女子社員の気持ちを伝えるように神崎春菜が聞いた。




「ええっと、そうだな…。一緒にツアーに行ったことあったっけ？」

ようやく我に返ったように須田は早坂に話を振った。

「うん、どうでしょう…」

早坂は首を傾げながらゆっくり言った。

須田は笑った。

「多分行ったことはないよな。君はスキーに興味はなさそうだったし。それよりアウトドアってか、暇があれば山やら川、海に出没していたって聞いたが」




へえ〜と言う声が静かに女子社員の中に広まった。