一年後の花嫁
それからずっと、後悔していた。
あれが最後だったなら、言えばよかった。
それと同時に、なぜあのとき彼女が俺に引越しのことを言わなかったのか。
その理由も、俺には都合のいい一つ以外、浮かばなかったのだ。
ずっと、十三年間ずっと。
俺に憑りついた、呪縛。
暗くなった日本庭園には、ついにライトが灯った。
このモミジの木の下に設置されたライトも、もちろん点灯する。
暗闇に照らし出された、彼女の姿。
最悪なことに、暗がりに浮かび上がった彼女の紺色の花柄ワンピースは、あの日の浴衣とぴったり重なった。
「―― あの頃、長妻のことが好きだった」
いまさら、遅すぎる。
十三年越しの告白。
相手はもうすぐ既婚者になるというのに。
「……あたしも。藤堂くんが好きだったよ」
もう過去形でしか伝えられなくなった想い。
過去形でしか繋がれなくなった、俺たち。
十三年という歳月は、あまりに残酷だった。