溺愛総長様のお気に入り。
「あの……煌くんのバイクはどこですか?」
「今は乗らねえ。鳳凰の総長は代々車って決まってんだ」
「車?」
みると、バイクが列をなす途中に車が停まっていた。
少し改造されているような、黒い車が。
「俺はあれに乗って、統率を図る」
力強く放つ言葉には、ものすごく責任が込められてるように思えた。
暴走族なんてお遊び……そう思っていたイメージが変わる。
総長っていう立場は、メンバーになにかあったら責任を取ったりと、きっとものすごく重い役割があるのかな。
「愛莉も一緒に乗るか?」
「いいいえっ……!え、遠慮しますっ」
バイクじゃなくたって、暴走に参加なんて怖くてムリ。
それに、そんな責任重大な煌くんの隣に、それこそお遊びで乗るわけにいかないよ。
「いつか隣に乗せるから覚悟しとけよ」
パニくるあたしに、煌くんはふっと笑みをこぼしてそんなセリフを吐くと、服の裾を翻して車の方へと進んでいく。