時のなかの赤い糸


一粒遥の足下に滴が零れた時、ガラガラと救護所の扉が開いて、山崎が現れた。




「綾野……待ってたんか」



少しため息をはくのが聞こえて、遥は顔を上げると山崎を見た。




「永倉はんは不死身なんやな、きっと」



山崎がそう笑うと遥はホッとして笑顔になった。




「よかった………
よかった、よかった!」




(ちょっと羨ましいな、永倉はん…)




幸せそうに笑う彼女をただ見ていることしか出来ない山崎は、少しの間、深いため息を吐き出した。



「ま、入り」




遥は、山崎に招かれて初めての救護所に入った。鼻にくる薬品の香りがどうも小さいころから好きで遥は落ち着きだした。




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