時のなかの赤い糸
「そしたら、先どちらを見ます?」
春に言われて遥は「私も?」と自分に指差す。
「手に擦り傷がありますよ!バイ菌が入っちゃいますから」
「あっでも沖田さんの分のお金しか……」
遥が目を泳がせながら言うと
「遥ちゃんならただで良いですよ!」
(消毒絶対痛いよっっ!)
遥は思いながらこんなに親切にされて断りきれなくて、結局じゃんけんに負けて先になった。
「春ちゃんじゃないんですか?」
診察室にいたのは春じゃなくておじいさん。
「お春は助手や」
(看護師ってことか)
と、遥は納得した。
「手ぇ貸してみ」
おじいさんに言われて恐る恐る手を指し伸ばした
べちゃっ!
(いだだだだっ!)
凄く消毒が滲みる+おじいさんが雑で遥の瞳がうるうるしだした。
ここで声をあげれば沖田は間違いなく帰ってしまうだろう、と必死に遥は耐えた。