時のなかの赤い糸
山南の瞳が細さを失って遥を見つめる。
「私は死ぬまでも死んでからも武士です」
〝死〟と言う言葉は重く
〝武士〟と言う言葉は真っ直ぐな気持ちそのまま伝えているようだった。
新選組局中法度では
脱走はキツい罪で、見つかれば切腹だった
山南だってわかっているはずなのに。
「私は急ぎます。明け方までは黙っていて」
山南はそれだけ言うと足早に屯所を抜け出していった。
ポタポタと床に落ちる涙の雫はたまって大きくなっていた。
「遥?」
あまりにも来るのが遅い遥を心配した永倉は遥のただ知れぬ様子にただ驚くばかりだった。