あなたの名前は忘れたけれど。
なぁ、俺の宝物だったんだぞ、お前は。


何をそんなに悩んでた?

何をそんなに追い詰めてた?


なんで悩みを、俺に言ってくれなかった?


お前のたったひとりの、親なのに。


葬式では、お前の彼氏が泣いていた。

一度だけ顔を合わせた事があって、好青年だと思っていて、コイツならお前も安心して嫁げるかもなぁ、なんて思ってて。


…なにも、親より先に死ぬ事はないだろう。


「…一番の親不孝だよ、お前は……」


涙で見えない、煙になって空へ飛んで行く娘の魂。
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