お前なんか×××!!!
August
8月。

あの日以降、告白できなかった自分が情けなくて、悶々としていた。

でも、あれから、遠かった二人の距離は、確実に近づいた。

近からず、遠からず。

いい距離感。

そのせいか、仕事がとてもしやすくなった。

帰りも何時も一緒に帰っている。

特に会話がなくても、息苦しくなることもない。

二人で居ることが当たり前。

お互い気持ちを言葉にしなくても、両思い。

…あれ?両思い?

私、仁に好きだって言われたことあったっけ?

思い返してみても、只の一度もない。

仁の行動は、私を想っての事なんだと思い込んでるだけなのではないか?

そう思うと、突然怖くなった。

…もし、私が好きだっていって、仁はそうじゃなかったら?

これでは只のイタイ女だ。

そんな事にはなりたくない。

この気持ちは、言わない方がいいんじゃないのか?

「おい」
「…」

「おい、楓!」
「は、はい?!」

…実は今、仁と一緒に帰ってる最中だったことをすっかり忘れて、自分の世界に入っていた。

「なにボケッとしてんだよ?車にひかれるぞ」
「ご、ごめん」

危うく車道に飛び出しそうになった私の手を掴んだ仁は、そのまま手を離すことなく歩いて帰る。

「ごめん、もう、余所事考えないで帰るから、離して」

「…嫌だね」

…結局、マンションまで、手を繋いで帰った。

…私のこと、子供だと思ってるのかな?

そう思うと、悲しくなった。
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