お前なんか×××!!!
「あの、ありがとうございました」
「ったく!独りで行動しやがって」

よくよくその声を聞くと。

「…仁?!」
「なんでお前独りなんだよ?」

そう言うと、ガシッと私の手を掴み人混みを抜けていく。

「はぐれちゃって。仁、会社の人は」
「あー、あれね。…大したことじゃなかった」

…私は突然立ち止まる。

当然手を掴んでいる仁も必然的に止まる。


「なんだよ急に?」
「…これ」

私の片手に抱かれているこのぬいぐるみは。

「さっき…私が欲しいっていったぬいぐるみ」
「…昔から、そのキャラクター死ぬほど好きだったからな」

…ぁれ。

もしかして、これを取りに行くために、わざわざ私たちと離れた、とか?

「…ありがとう、仁」

私は、満面の笑みを見せた。

「チッ!…可愛いお前が悪い」
「え?…っ!!」

凄い人混みの中にもかかわらず、仁は私にキスをした。

でも、周囲はそんなこと気にしてない。

みんな、花火に夢中だから。

…ゆっくり離れた唇。

私は静かに目を開けた。

「お前のことわかってんのは、俺だけだから」

そう言うと、また、歩き出す。

私はとにかく黙ったまま、仁についていく。

…ついたのは、人気のない場所。でも、花火は良く見える。

仁が座ったので、私もその横に、静かに座る。

「キレイだね」
「ん?あぁ」

「友美達、どうしてるんだろ?」
「いいんじゃねえ?あいつらはあいつらで、勝手に楽しんでるだろ」

「ねえ仁」
「…なんだよ?静かに花火も見れねえのか?」

「私ね、仁の事…」
「良いから黙って花火見ろ」


…自然に好きだと言えたのに、仁はそれをさせてはくれなかった。
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