彼・・・私の天使。

2


「まだ昔の事、引き摺ってるの?」

「そんなに執念深くないつもりだけど」

「言わないでいようと思ったんだけど、この前、銀座で見かけたわよ。たぶん奥様と高校生くらいの男の子と一緒だった……」

「そう。日本に居るんだ」 

「気にならない?」

「別に、どうってことないけど」

「昔と変わってなかったわよ。息子さんかしらね。よく似てたから」

「はい。その話は終わり。それより二十五歳の彼、どこで知り合ったの?」

「大学病院の後輩よ。もう五年付き合ってる」

「えっ? じゃあ、二十歳の時から? 犯罪よ」

「そうかもね……。やっとインターンよ」

「何? 思い通りの男に育てようとか思ってる訳?」

「そう思った事もあったけど無理ね。思い通りにならないのよねぇ、これが」

「何かあったの?」

「別に何も無いけど、このまま続けても何の発展もなさそうっていうか」

「結婚とか考えてるの?」

「それは考えないようにしてる。負担なだけだもんね、私の存在が。それに一人でも生きて行けるし……」

「そうねぇ。変にゴタゴタ揉めるくらいなら一人の方が増しってね」

「やっぱりそう思う?」

「仕事があるからね。無かったら適当な所を見繕って可愛いお嫁さんに……なれそうもないわね……」

「やっぱり。あと二十年経って、お互い一人だったら一緒に住まない?」

「何? 私に家事やらせようって魂胆?」

「バレた?」 

「バレバレ~」

「お抱えの医者ってどう? いいわよ」 

「考えとく」

「私、泊まろうか?」 

「いいけど、でも大丈夫よ。それに一緒に居ると一晩中喋ってそう」

「そうね。休めないわね。あっ、今夜、彼、来るんだったわ」

「何? それが言いたかった訳? はい、ごちそうさま。さっさと帰ったら?」

「何かあったら電話してよ」

「デート中に? 救急車呼ぶから安心して」

「絶対、呼ばないくせに。本当に電話してよ」

「うん。ありがと。彼によろしく」
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