彼・・・私の天使。
牧場で


 ステーキ・ハウスから更に三十分ほど走って牧場に着いた。
 こんな所にって思うくらい自然があふれてて緑が多くって空気がキレイで何だか、ほっとする。

 社長が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。息子から電話がありましたよ。ゆっくりしていってくださいね。婆さんが今、牛乳持って来ますよ」

「ありがとうございます。ここに来ると、ほっとします」

「あなたは忙し過ぎるんですよ」

「せっかく社長さんが美味しい牛肉を卸してくださってるのに、忙しいなんて文句言ったら申し訳なくて」

 奥様が牛乳を持って出て来られた。

「まぁ、いらっしゃい。お元気そうで安心したわ。これ今朝搾ったばかりですよ。さぁどうぞ」

「ありがとうございます。いただきます」

「いつも飲んでる牛乳と味が全然違います。美味しい」
 と瞬君。

「都会の方は、みなさん、そう言ってくださいますよ。お二人とてもお似合いね。もしかして近々ですか?」

「また余計な事を。すみません。縁談まとめるのが趣味みたいな婆さんで、気を悪くせんでください。悪気は無いですから」

「いいえ。僕は嬉しいです。そんな風に見えてるだけでも」

「しかし、あいつが似合いだと思ってまとめた二人は、みんな上手くいって幸せに暮らしておるみたいですよ。縁結び婆あの勘とでも言うんですかな。そうだ。一回り散歩でもされたらどうですか?」

 そう言われて彼と二人ゆっくりお散歩。排気ガスの公園を歩くのとはまるで違う。きれいな空気が、ご馳走みたいで、それだけで癒される。

「素敵なご夫婦ですね」

「でしょう? あのご夫婦を見てると結婚も悪くないかななんて。私には両親が仲が良かったって記憶がなくて」

「家の親は、いまだに仲良しですよ。ほぼ一日中一緒に居るっていうのに」

「和菓子屋さんだったわよね。羨ましいな」
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