彼・・・私の天使。

2


 お散歩から帰ると、とても賑やかな光景が広がっていた。
 この牧場は獣医大や農大の学生さんを受け入れていて、いつも若い研修生でワイワイガヤガヤ。

 きょうも野外バーベキューが始まったらしい。

「さあ、お二人も一緒にどうぞ」

「あっ、でも申し訳ないですから」

「何言ってるんですか。お二人くらい増えても変わらないですよ」

 お言葉に甘えて……。甘え過ぎ? 夕食のバーベキューまで、ご馳走になってしまった。ビールだワインだと大騒ぎ。

「あっ、僕は運転があるので」
 と言う瞬君。

 で、私が二人分? 飲まされてしまった。自分で言うのも何ですが結構強いつもりだったけれど、大学生の若さには敵いません。

「もう無理です。帰れなくなっちゃいます」

「泊まる部屋くらい、いくらでもありますよ」

 そう言って社長は笑ってる。瞬君は心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。あなたが天使に見えるけど……」

「そりゃ、ダメですね」
 って笑ってる。

 こんなに飲んだのは久しぶり。やっぱり年かなぁ……。


 夏の終わり。緑の上を渡ってくる風が心地好い。少し休ませてもらってそろそろ帰らないと。

「ありがとうございました。お陰で楽しかったです」

「また、いつでも来てください。彼と一緒に。待ってますよ」

「ありがとうございます。ごちそうさまでした」

「本当に顔を見せに来てくださいね。楽しみにしてますよ」

「お二人とも、お体に気を付けて、お元気で」

 車まで送ってくださって見えなくなるまで手を振って……。

「良いご夫婦ですね。あっ、眠って良いですよ。まだ時間かかりますから」
< 22 / 108 >

この作品をシェア

pagetop