彼・・・私の天使。

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 彼女は笑顔で私に言った。
「きょうは、お客様として食事を楽しんでくださいね。では、ごゆっくり」

「スタッフにも恵まれているんですね」

「ええ。良い子たちばかりよ。感謝してるの。一人じゃ何も出来ないもの。バイトは何時から?」

「きょうは七時からです」

「じゃあ、シャンパン一杯くらいなら大丈夫よね? ペリエで乾杯じゃ、お祝い気分もちょっと寂しいから」

「はい。でもあなたほど強くはないですよ」

「えっ? そんなに強くないわよ」

「この前、かなり飲んでましたよ」

「そうだったかしら? 過去の事は忘れるようにしてるから。じゃあ、おめでとう」

「ありがとうございます」

 ウェイトレスが、お料理を運んで来る。
「失礼致します。アミューズは、鮪でございます」

「オリーブオイルのソースね」
 と私が言うと

「おいしいです」
 と天使が言ってくれた。

 それから、ヴィシソワーズ、伊勢海老のグリル、仔牛のステーキ、パン。デザートは、カシスのシャーベット、そしてエスプレッソ。

「こんな素敵なお店で食事出来て、お料理も最高でした」

「それ、シェフに言ってあげてくれる? シェフの二人を呼んでくださる?」

 ウェイトレスの子が
「はい。かしこまりました」

 シェフが二人、厨房から出てきて
「本日は、ありがとうございました。お口に合いましたでしょうか?」

「とても美味しかったです。伊勢海老のグリルのソース気に入りました。ステーキのソースも、僕には初めての味でしたけどとても良かったです」

「ありがとうございます」

 もう一人のシェフが
「あの社長、他のお客様は、どうなさったんでしょうか?」

「あぁ、あれは、あなた達の分よ。ちょっと足りなくなっちゃったけど」

「社長。ありがとうございます。三人で、いただきます」

「ごちそうさま。じゃ、後、お願いね」

「ごちそうさまでした。ありがとう」
 と瞬君が笑顔で。

「ありがとうございました」
 三人で声を揃えて。
 そしてウェイトレスの子が笑顔で見送ってくれた。
「お気をつけて」
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