彼・・・私の天使。


 ドアが開く。変わらない彼女の笑顔。部屋に入って直ぐに抱きしめた。

「どうしたの? 何かあった?」

「何も。あなたが欲しいだけ」

「風邪の病み上がりなんですけど……」

「まだ体、辛いの?」

「ううん。そんなことない」

 僕は彼女のやわらかな白い肌をやさしく責め続けた。このまま溶けてしまいそうなほどの悦びを感じていた。



 一月五日。この部屋で朝を迎えるのは何度目だろう。目覚めた時に腕の中に彼女が居ることが、とても自然で、この上もなく幸せだと感じていた。

 もしも彼女を失うようなことになったとしたら、考えただけで怖かった。そんなこと有り得ない。心の中で呟いて……。

「もう起きてたの?」
 彼女が目を覚ました。まだ眠そうだ。

「うん。疲れたの?」
 僕が聴いた。

「どうして?」
 不思議そうな顔。

「昨夜、僕の腕の中で、あんなに……」
 たまらなく色っぽかったよ。

「恥ずかしいから言わないで」
 その困った顔が可愛すぎる。

「誰も聴いてないよ」
 そう。僕だけのもの。

「私が聴いてる……」
 その上目遣い反則だ。
「さぁ、もう起きようかな」

「まだ外、真っ暗だよ」
 もっとこのままで居たいのに……。

「すぐに明るくなるわよ。食事も作らないといけないし、メイクもしないと」

「スッピンの方が好きだけどなぁ」

「ありがとう。でも仕事に行くのにスッピンって訳にはいかないの。きょうから劇団とバイトで、また忙しくなるんでしょ? しっかり食べて頑張らないと」

「うん。今夜は来られないかも。受験の方も追い込みだしね」

「来られない時はメールくれる?」

「うん。そうする」

 何度目? のモーニングコーヒーと朝食を済ませ、一緒にマンションを出た。
< 58 / 108 >

この作品をシェア

pagetop