彼・・・私の天使。


「お願いだから、部屋に戻って僕の話を聴いて……」

「話なら外でも出来るわ」

 私はマンションの玄関に向かって歩き出した。もう彼の部屋には戻らない。そう決めていたから。

「あのお金は受け取れない。自分でなんとかする」

「せっかくのチャンスなんでしょう? また潰されるわよ」

「それから、あの娘は劇団の同期で、なんでもないから」

「私が、そんな事で怒ってるとでも思うの? あの時間帯のドラマに出演すれば必ず注目される。夢だったんでしょう? もうすぐつかめるかもしれないのよ。私の存在が知れたらスキャンダルになるの。何て書かれるか想像つくわ。だからもう会わない。そう言ったの。分からないの?」

「分からないよ。あなたに会えなくなるなんて考えただけで耐えられない。あなたは僕に会えなくなっても平気なの?」

「私は待てるわよ。何年でも。あなたの活躍を見られるなら平気だわ。夢が叶うチャンスなんて、そうそうあるもんじゃないの。今が全てを懸けてでも頑張らなきゃいけない時なんだと思わないの?」

「やっぱり、あなたは大人なんだね。今まで僕があなたを守っていたんだと思ってた。僕があなたに支えられてたんだね。分かったよ。頑張るよ。あなたのためにも」
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