上司との同居は婚約破棄から
黙ってしまった高宮課長を仰ぎ見れば高宮課長もまたこちらを見ていた。
その瞳が憂いを帯びているような気がしてそっと目を逸らした。
吸い寄せられて堕ちてしまったら、二度と這い上がれないような谷底へ堕ちてしまう錯覚に陥った。
「……なんでもありません。」
そう、だよ。
愛梨さんにも言われた。
全てを話す必要なんてない。
高宮課長も言っていた。
私達はただの同居人だ。
そんな間柄の関係で話すような内容じゃない。
そして何よりも、決壊してしまいそうな心の悲しみをまだ表に出す勇気がなかった。
酔った勢いで話し始めたせいで気まずい空気になってしまったまま、マンションまでの道を歩いた。