キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
翌朝。いつの間にか戻って来てた保科さんと朝食もいただき、出勤の睦月さんに深くお礼を言って彼女を見送る。
その後で保科さんがあたしの駅まで車で送ってくれて、本当にお世話になるだけなってしまった。

駐輪場の脇で停めてくれた車から降りる間際、彼が運転席から微笑みを傾け、唐突に言った。

「僕が睦月を離したくないのはね」

そう前置きをして。

「純粋な愛情だけじゃないんだよ。それこそ、聴かせられないような酷い欲望だってある。でも突き詰めれば愛でしかない。睦月に僕が本当はどう見えてるんだとしても、・・・僕は彼女を死ぬまで手離さないよ」


本当はどう見えるんだとしても。



保科さんの言葉は。木の枝に引っかかって、風船が右に左に風に揺らされるみたいに。あたしの頭の片隅にたわんで残響した。


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