キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
『夕べは楽しかった?』

そう訊かれて瞬間、違う方向に心臓が跳ねた。
ある程度の答えは用意してたから、さり気なく笑って答える。

「なんかお姉さんが出来たみたいで、新鮮なカンジだった」

散々泣いて、慰めてもらったなんて言えない。
顔が見えなくて良かった。
朝は腫れぼったかった瞼も、彼が帰る頃には元通りになってる、きっと。

「ダンナ様もすごく素敵な人で、いつでもおいでって」

『・・・そう良かったね。僕も一度お礼がてら挨拶したいって、伝えておいてくれる?』

「あ、うん・・・っ。睦月さんに言っとく」

『じゃあ・・・そろそろ仕事に戻らないと。今日は早めに帰るよ。晩ご飯、レンコンのきんぴら食べたいかな』

「りょーかいです、いっぱい作っておくから。仕事ガンバってね!」

『うん。ありがとう、りっちゃん』

向こう側で。目を細めて優しく笑む、ミチルさんの顔が手に取るように浮かんだ。
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