キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「・・・淳人、さんに・・・? ど・・・うして」

今度こそ思考回路が振り切れるかと思った。
だって、あのひとを断ち切れって言ったのはミチルさんだったのに。

驚愕に目を見開いたまま、虚ろにそれだけをやっと返すと。
視線をフロントガラスの向こうに戻した彼が、車を発進させながら淡々と答えた。

「後ろをずっと付いてきて、離れるつもりが無いらしいからね。りっちゃんをこれ以上、振り回したくないんだ僕も」

後ろを付いて・・・?
はっとして躰ごと捻り、シート越しに振り返ったけど、ヘッドライトとシルエットだけじゃ後続の車種がセダンらしいってこと以外、判別できない。

「って、・・・えっ、淳人さん、まさか会社からずっと・・・?!」

「僕がりっちゃんを迎えに来た時から、車には気付いていたんだよ」

冷ややかなミチルさんの口ぶりに、ようやく合点がいった。

昨日の今日だから、ホワイトデーの。
淳人さんがあたしに会いに来るって、ミチルさんも思ったんだ。
だから、わざわざ迎えに来た。自分を盾にする為に。

淳人さんと。対峙するつもりだろうか。


車を走らせ続けるミチルさんの、毅然とした横顔をもう一度見やり。
隙間に置いてたバッグに手を伸ばして、スマホを取り出す。

淳人さんとの間に横たわる、見えない導火線に火花が飛び散ってる気配を否応なしに感じて。アドレスをタップする指が、・・・少し震えた。
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