キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
ミチルさんは一旦開きかけた口許を片手で覆うと、あたしから視線を逃した。
ややあって戻した眼差しは。懐かしむような、愛おしむような。・・・それでいて寂しそうにも見えた。

「いつの間に、りっちゃんはそんなに大人になってたんだろうね・・・。僕の方が置いてきぼりだ」

苦そうに笑みを滲ませ、肩で息を吐く。
一瞬、遠くを仰ぎ。もう一度あたしを見下ろした時には、やんわりといつもの微笑みが浮かんでた。

「りっちゃんは狡くなんかないよ。・・・狡くても、好きだよ」

目を丸くして思わず固まるあたし。
妹として。なのは分かってても、いきなり来られると一気に熱が上がる。
あたしも大好き。
ココロで返せても、恥ずかしくて口には出せない。あんなに無邪気に言えてた子供の頃が自分で羨ましい!

狼狽えて口籠ってるあたしの手を繋ぐと、ミチルさんは桜色の路(みち)をまたゆっくりと歩き出した。
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