キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
さっきまでの傷みの気配を、包み隠したように消したミチルさんは、隙間もないくらい固く指と指を繋いで。
重ねてるのは掌だけなのに、なんだかまだ腕の中に抱き締められてるみたいだった。



「りっちゃん。花びらが落ちてる」

不意に足を止めた彼がやんわり微笑んで、こっちに手を伸ばした。
頬をなぞり、肩にも届かないあたしのショートの髪を掬って耳にかけると、親指と人差し指で掴まえた薄桃色のそれを、目の前に差し出す。

「ほんとだ。ありがと、ミチルさ」

上を向こうとした刹那、顔が寄せられて目を瞑る。束の間のキス。

目が合って。
淡く笑まれた。

「・・・僕は、りっちゃんにどんな雪も降らせたりしないよ」

それは決意のようにも見えたし、償いのようにも聴こえた。

「隆弘の分も、僕の全てでりっちゃんを守る。・・・結婚しよう。4月19日に」


それは。宣誓だった。
愛してるとは言わない、だけど。・・・揺るぎない。



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