キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
背もある分、あたしとは顔の大きさが違うなぁ。
滅多にない機会に、遠慮なく見つめさせてもらう。
肌も綺麗だし、髭もお兄ちゃんほど濃くないし。
お兄ちゃんは配送関係の仕事してたから、日焼けして真っ黒で、放っとくと髭でザラザラな顔だったもんね。
ミチルさんが柔なら、間違いなくお兄ちゃんは剛って感じ。
クスリと漏らす。

知的な雰囲気のミチルさんと並ぶと、体力と明るさだけが取り柄の筋肉マンで。
そうだね、ミチルさんが月、お兄ちゃんは太陽。二人はかけがえのない親友同士で、どっちかが無くなったら。重力に引かれて墜ちちゃう。戻れない、・・・あの天空(そら)には。二度と。



太陽を失くしたミチルさんが。照らしてくれる別の星の光りを求めることはない。永遠に。
・・・・・・分かってる。あたしがどんなに想っても。
目を伏せる。

でも、いいんだ。
お兄ちゃんの妹として、一生大事にしてもらえる。ミチルさんにとって、あたしは誰より特別。お兄ちゃんの形見を守ることが、彼の生きがい。
これ以上ないってくらいの、極上の繋がり方。あたしはそう思う。

恋人でも夫婦でも、もしかしたら終わりは来る。でも、ミチルさんがあたしに注ごうとしてるのは人生の全て。
お兄ちゃんの代わりに。それは。使命。誓い。・・・呪縛。


それであたし達は掬われる。お互いに。

離れられない。ミチルさんは、あたしから。

卑怯でズルいのは、本当はどっちだって思う? お兄ちゃん・・・・・・。
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