キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
本殿まで進むのにもけっこうな時間がかかり、それでもどうにかお賽銭を投げ込んで拍手を打つ。

神様どうか。今年も一年、二人とも元気で無事に過ごせますよーに。
ミチルさんが転勤になんかなりませんよーに。
早く仕事に慣れますよーに。リストラになりませんよーに。
えーと、それから。

ミチルさんが。幸せでありますように。


取りあえず、最初と最後のお願いだけでも聴いてください、神サマ。
しっかりと心を込めて祈った。


「りっちゃん、ずい分と熱心にお願いしてたね」

参道をまた戻りながら、ミチルさんが視線を傾げる。

「恋人が欲しい、とかそういうの?」

「あーそれだったら、魔法使いになりたいってお願いするー」

ケラケラと笑って誤魔化した。

叶わなくなったら困るから、ミチルさんには内緒だよ。
< 28 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop