キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
お兄ちゃんへの手土産も忘れずに、神社を後にしたあたし達は。そこから戻る形で、車で一時間ほどの市営霊園に向かった。

お正月の帰省ついでにお墓参りをする人も多くて、駐車場もわりと埋まってる。霊園内の売店でお花を買ったら、お線香もサービスしてくれた。

広い霊園は区画ごとに番地みたいなものが付いてて、それを目印にすれば迷わない。水の入ったバケツとひしゃくを持って、お兄ちゃんが眠ってる場所へ。

通路を進み、芝生の上に縦型や横型の墓石が整然と並ぶ一画の、奥から二番目。志室家、って彫られた洋型の黒御影石のお墓。・・・お兄ちゃんのだ。

「お兄ちゃん、来たよー」

明るく声を掛けながら花立や水鉢を洗ったり、竿石を拭き掃除したり。
買った花は二つの花立に別け、切り花用の延命剤を入れておく。
それから冷えたビールと、神社の露店の焼きそばをお供えに。
お線香に火を点けて、ミチルさんと並んで静かに手を合わせる。

目を閉じ、いつまでも手を合わせ続ける彼の横顔を。
あたしもいつまでも。ただ傍で見守り続ける。一生でも、・・・ずっと。
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