キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
手元に戻ってきたスマホをバッグに仕舞いながら、あたしは詰めてた息を力無く逃す。
ミチルさん、あたしが淳人さんといるの嫌なのかなぁ・・・。

さっきのはどう聴いても、ミチルさんの方が攻撃的で。いくら極道さんって言っても友達なんだし、・・・淳人さん、悪い人にも見えないし。断った方が良かったのかな。どうしよう。

気持ちが萎んで無口になっちゃったあたしの肩を、淳人さんが自分に引き寄せた。

「俺といる時に、他の男のことを考えるな。・・・妬けるだろうが」

低い声に甘さが漂って。
今のは少しわざとらしく聴こえたから。きっと慰めのようなものなんだろう。・・・少なくても自分の意思でNOって言わなかったんだから、淳人さんに気を遣わせるのも違うよね。
気を取り直して、あたしは小さく笑む。

「・・・ごめんなさい」

「いい子だ」

頭の天辺に弾力のあるものが押し当てられ、それが淳人さんからのキスだったと分かった瞬間。そんなの初体験で、それこそ蒸気でも吹きそうになった。
肩を抱くのは、ミチルさんもよくするけどキスはない。いや当たり前だけど! うわ、お兄ちゃん、淳人さんてちょっと困るよ~っっ。

よく分からないけど、波打って音を立てる心臓がずっと落ち着かないまま。
躰をしゃちこばらせて、肩に置かれた大きな手の感触を意識しないではいられない自分に、戸惑っていた。


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