キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「・・・りっちゃん」

顎を捕らえてた指が濡れた頬を撫で、涙の跡をなぞった。

「泣かせてごめんね。・・・でも僕は隆弘に約束したから。りっちゃんには、優しい世界だけをあげるって」

一瞬目を伏せ。次にあたしを見つめた時、そこには。触れたら壊れそうなほど儚そうに微笑むミチルさんがいた。

「りっちゃんは僕だけ見てて。約束する、僕はずっとりっちゃんの為だけにいるよ。・・・・・・淳人のことは忘れさせる、僕が」


ゆっくりと。顔が近づいてきて。
あたしの口許に吐息が重なった。

う・・・そ。

ミチルさんの薄い唇が、あたしの唇を撫でて啄み。息を継ぐように緩めた瞬間を逃さず、舌をすり抜けさせた。
呆然と力の入らない口が、いっぱいに広げられて塞がり一気に深く繋がる。


淳人さんのキスは。圧倒的な征服だった。

ミチルさんはその触手で、侵しながらあたしを探る。

しなやかな鞭のように絡みついた舌先が。弱いところを嬲る。

あたしが躰を震わさせて反応すると、そこを優しく苛むのを止めない。

だんだん頭の中が熔けてきて。

甘美な疼きを奥底で感じ始める。

堪えきれずに、身を捩って逃げようとするのに。


いつの間にか。
ソファに仰向けに躰ごと縫い留められ。
切ない疼きに、くぐもった吐息を漏らしながら、あたしはミチルさんのキスに翻弄されるだけ。


毒が回ったと思った。脳髄まで麻痺して。よく分からなくなってた。


ようやく離れたミチルさんの唇が首筋を辿り、きつく吸われた時も。

部屋着のスェットの下で、あたしの素肌に触れてるのがミチルさんの手だって分かった時も。

誰にも触れさせたことがないところを丹念に食まれて、上げたことが無いような声を上げた時も。

自分のことじゃないみたいだった。

「・・・りっちゃん」

ミチルさんの囁きを耳元で何度か聴いた。気がした。

「僕にしがみついていいから・・・力抜いて」

云われるまま必死に。
息が詰まるような圧迫感と痛みを、脚の間のもっと奥で堪え。
ゆっくり動かれてる内に、言い知れない何かの波に飲み込まれる。

「・・・・・・ア・・・ッ。みち、る・・・さ・・・っっ」

揺さぶられ、中で突き上げられる何かに全部を支配されて。



躰の細胞がひとつ残らず、真っ白に熔けた。
ココロまで熔かして。



・・・あたしは、どこに居るのか。分からなくなった。




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