キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「オジサンて、あたしと4つしか違わないってば」

「30歳の大台に乗っちゃった男だよ? りっちゃんの横を歩くのが申し訳ないぐらいだね」

「待って。ミチルさんはどっからどう見ても、イケメンのお兄さんにしか見えないから!」

そこはもう、全力で否定させていただきましたとも。

G・Gフロンティアっていう、ビルとかマンションの防災機器関連の会社に勤めてて、その若さですでに課長職のミチルさん。
取引先の新規開拓の他にも、機器メーカーとの交渉だの何だので今回みたいに出張があったりもするらしい。
支社も幾つかあって今は本社勤務なんだけど、・・・・・・転勤になったらどうしよう、って。それだけが密かな心配ごと。ミチルさんは大丈夫って、全然気にしてる様子がない。大らかな強心臓?

「じゃあ、明日は9時に出ようか。映画の時間はりっちゃんが調べておく
こと。いい?」

「ん、分かった」


それからも、お団子をちょこちょこツマミながら他愛もないお喋りをする。ミチルさんは聴き上手だから、女の子同士で話してるぐらい、いつも楽しい。・・・ちょっと気分が凹んでても、いつの間にか浮き輪に掴まって浮いてたりする。

あたしにとって。お兄ちゃんと同じくらい大事なお兄さん。
菅谷満(すがや みちる)という彼は。
優しくて、懐が広くて温かくて、厳しいところは厳しい。お兄ちゃんみたいに。

大好きなミチルさんと、こうしてずっと一緒にいられれば、それでいい。
たった一人の“家族”と、これからもずっと。


ミチルさんの穏やかな笑顔を見てるだけで、あたしは。掬われる。
・・・・・・生きていける。



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